◆演奏料と MPN について
そもそも MPN 本来の役割から言って、このような踏み込んだ事柄について口を差し挟むべきではないという意見がある一方で、やはり MPN に期待する声があるのもまた事実です。我々も、著作隣接権の分配機構として果たすべき本来の役割でないことは重々承知していますが、各々の演奏家団体やコーディネーター各社の現状に鑑み、少なくとも様々な意見や方法を取りまとめるところまでは MPN が主導する必要があるのではないか、という結論に達したわけです。
勿論、演奏家は各々個人事業主であり、演奏料の設定や支払い方法等の選択は個々の判断や営業方針に従って自由に決定していただくことが望ましく、新しい方法を押しつけるというような意図は毛頭ないことを、誤解の無きよう申し添えておきます。
◆「並び」の考え方との訣別について
まず、長年続いてきた並び数字と呼ばれている演奏料設定について、誤解を恐れないで言わせていただくと、この考え方が悪しき慣習の源であり、消費税導入以降数々の混乱を招いた元凶です。
源泉徴収税を差し引いた手取額をまず設定し、その金額から逆算する形で (本来は元になる) 演奏料を計算するやり方は、いまや時代遅れと言わざるを得ません。消費税が導入されて以降、いよいよその『並び数字逆算方式』には無理があるということがはっきりしてきました。
| ①演奏料 (ランク) | (100%) | (表2) 左端欄 |
| ②源泉税 | (10%) | (表2) 左から2列目欄 |
| ③源泉税引後 (手取額) | (90%) | (表2) 左から3列目欄 |
| ④別途消費税 | (5%) | (表2) 左から4列目欄 |
| ⑤総額 (消費税込演奏料) | (105%) | (表2) 左から5列目欄 |
| ⑥受取額 (消費税額込手取額) | (95%) | (表2) 右端欄 |
(表 2)を開く (表 1) と (表 2) を並べてご覧ください。
このような現状の演奏料の計算方式の中で、旧態依然とした、まず③の手取額を切りの良い金額に設定し、そこから逆算して 0.9 で割り①の金額を求める方法では、①の金額が「並び数字」になることが多くなります。すべての基となるべき①が並び数字だと、消費税も並び数字となって計算が面倒になる上、計算方法によっては小数点以下に切り捨てる端数が出る為、合算した時に切り捨てた端数が影響して合計金額に違いが出てきます。
例えば、演奏料 (ランク) が 8,888 円で、手取額が 8,000 円の人が、6 時間レコーディングをしたとします。
■並び数字の演奏料 (ランク) ベースで計算すると
消費税抜きの売上金額は…
8,888 円 × 6h = 53,328 円 (イ) となります。
■ところが手取額ベースで計算すると
消費税抜きの場合は…
8,000 円 × 6h = 48,000 円
48,000 円 ÷ 0.9 ≠ 53,333 円 (小数点以下切り捨て) (ロ) となり、
※(イ) と (ロ) とでは、末尾に 5 円以上の差が出ています。
※消費税の計算でも、当然ながら同様に誤差が出ます。
※源泉徴収票はほぼ間違いなく (イ) の数字で来ることになります。
しかし、演奏料 (ランク) が 9,000 円で手取額 8,100 円の人が 6 時間レコーディングをしたとすると、
■演奏料 (ランク) ベースで計算すると
消費税抜きの売上金額は…
9,000 円 × 6h = 54,000 円 (ハ)
■手取額ベースで計算しても
消費税抜きの売上金額は…
8,100 円 × 6h = 48,600 円
48,600 円 ÷ 0.9 = 54,000 円 (ニ) となり、
※(ハ) と (ニ) とでは誤差は生じず、消費税計算上の誤差もありません。
【何故このようなことが起きるのか?】
例えば、演奏料 (ランク) 8,888 円で手取額 8,000 円という場合に、
手取額から演奏料 (ランク) の金額を算出するには、【手取額 ÷ 0.9】という計算プロセスになります。これをそのまま計算すると、
8,000 円 ÷ 0.9 ≠ 8888.8888888888888888888888888889 円 となり、
この数字ではいちいち計算していられませんから便宜上 8,888 円としているわけで、
ここで 1 時間当たり 0. 8888888888888888888888888889 円の誤差が生じていることになるのです。
それもこれも、ひとえに手取額 8,000 円というところから考え始めるからなのです。
このように計算方法によって金額に誤差が生じることは好ましいとは言えず、この差が積み重なって確定申告の際には一年分の大きな誤差となって出ることになります。
◆消費税をもらいやすい「演奏料金額」について
今、「とっぱらい」や「請求」等、演奏料の支払われ方に拘わらず、洩れなく消費税を合算して支払ってもらえないか、という話があります。
その為には、割り切れない数字になるような演奏料の設定や、計算方法によって金額が変わるようなシステムは、終わりにした方が賢明だと思います。
スタジオ等での仕事後に現金で支払いを受けるような場合において、簡単に計算できるようなシステムと金額設定が望ましいことは申し上げるまでもありません。計算方法によって金額が変わるというようなことは避けなければなりません。
ここで大切なことは、演奏家自身が演奏料に対する認識を改めなければ事態は解消されないということです。
※(表 1) の③の金額 (源泉税引後手取額) を演奏料と考えている方が多いように感じます。
つまり、「自分は演奏料として手取で○○円欲しいので…」とまずはそこが肝心で、源泉徴収税額分は演奏料ではなく、コーディネーターさんが計算して税務署に収めてもらって、申告の時に還付してもらうもの――というように捉えているわけです。
【所得税】
しかし実際には、演奏料は源泉税を含む①の金額であって、その①の演奏料の10%を源泉徴収税としてあらかじめ差し引かれて税務署に納付され、確定申告の際に算出した所得税額に充当し、足りなければ「更に納め」、納付しすぎていれば「還付される」という理解が正しいのです。
【消費税】
同じく、その①の演奏料の 5 %を消費税として受け取り (預かり)、やはり確定申告の際に一年分の最終的な支払消費税額と相殺した残額を「納付する」ことになります。
どちらも、①の演奏料の、というところが大切で、全ての計算の基になっているのが①の演奏料だということが分かります。
■このことから…
源泉税を含む①演奏料 (ランク) の金額は、全ての計算の基になるわけですから、その①の金額を、その後の計算が容易になるように、現在の並び数字ではなく、割り切ることのできる切りの良い数字に設定しておくことをお薦めいたします。
因みに、演奏料を千円単位で設定しておくと、消費税が何%になろうと(末尾が小数点以下にならない限り)消費税の末尾が 1 円単位にはならず、必ず 0 円 (10 円単位) になるので、現場において消費税分までは払いにくい、という話も成り立ちにくくなります。
